移住者体験談
岩崎正知さん
移住先 | 須坂市 |
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移住年月 | 2018年3月 |
年代 | 40代 |
家族構成 | 夫婦 |
職業 | ワイナリー勤務 |
●ワインの仕事を目指すことになったきっかけ
須坂市亀倉の楠ワイナリーで働く岩崎正知さん(45歳)は、夢だったワイナリーへの就職を果たし、今年(2018年)3月にご夫婦で東京から須坂市に移住してきました。現在、楠ワイナリーでショップ運営や営業部門を主に担当し、ソムリエの経験を活かしながら働いています。
須坂市に移住するまでの経緯や現在の仕事、須坂市の暮らしについて話を聞きました。
「大学時代から、いつか自分の店を持ちたいという夢を持っていました。もともとお酒が好きだったこともありますが、ただ「好き」ではなく、作り手のポリシーが感じられるお酒が好きでした。大学卒業後、ビアホールを中心に全国展開する総合レストランチェーンに就職し、その後もバーテンダーやカフェなど飲食店で店長や支配人などの経験を積みました。スコットランドのウイスキー蒸留所を見学し刺激を受け「物を作る」ということに興味が湧き、転職を機にフランスやイタリアで1ヶ月間ほどワインについて学びました。もっとワインについて深く知りたいと思ったのが、現在の仕事に結びつく大きなきっかけになりました」
「ワインの産地といえば山梨県か長野県かなと思っていました。山梨県勝沼にはワインの飲み比べが出来て学べる場所があったので定期的に行っていました。しかし、ぶどう品種特性の表現方向にブレを感じたり、自分が求めるスタイルとの違いを感じていました。その後、長野県が地元で生産・製造されたものだけを認定する原産地呼称管理制度を成立させたことを知り、ワインに対する意識の高さに注目するようになりました。長野県内でも北信のワインを口にした時、その味に惹かれ、この地域の特性が出ていると認識しました。ワインの素地があり、今後発展していく可能性を強く感じる場所になりました」
●移住を考え始めたきっかけと夢だったワイナリーでの就職
「2011年の東日本大震災を機に東京での暮らしに不安を感じるようになりました。ワイン作りに対して夢を持ち始めたのと同時に生活への不安を感じ始めたことで「移住」というものを考えるようになりました。特に40歳を過ぎてから体力的な不安を感じるようになりました。仕事に関しては、ソムリエとして勤務し従業員をとりまとめ、売り上げも毎年更新するなど順調でした。その半面、終電で帰宅し睡眠時間は平均5時間という生活でストレスがあったのも事実です。そんな生活を繰り返していた42歳の時、勤務中に倒れ病院へ運ばれてしまいました。これを機に本格的に移住を考え、いつ職場を辞めてもいいように態勢を整えながら仕事をしていました」
「東京有楽町駅前のふるさと回帰支援センターで山梨県と長野県それぞれの相談カウンターで移住先を探し始めました。それまでの経過からワインを通して長野県への思いが強かったことや、長野県の相談員から頻繁に連絡をもらっていたことが移住に向いた要因の一つでした。最初は北信2か所のワイナリーを希望しましたが、応募を受け付けていなかったり、自分のスキルが活かせる内容ではなかったため足踏みの状態が続きました。須坂市にも好きなワインを作るワイナリーがあるので、銀座NAGANOで行われていた須坂市移住個別相談会に参加しました。相談を通じて楠ワイナリーを紹介され、社長との面談の機会を得たことで採用へと繋がりました」
●楠ワイナリーでの仕事や須坂市での暮らし
「得意先まわりは初めての経験です。勤め始めて5ケ月ほどになりますが、とにかく今は新しい仕事に慣れる時間を過ごしていると思っています。これまでの職場では営業を受ける側だったので、今は逆に当時を参考にしています。楠ワイナリーの評判を良くするのも悪くするのも自分の対応にかかっていると思います。大学が工学部出身である楠社長の深い研究心が美味しいワインを作り出しています。お客様から楠さんのワインは美味しいねという言葉が聞けた時は嬉しいです。そういう声が聞けるワイナリーで働けることに、とても誇りを感じているし身が引き締まる思いです。今まで楠社長が築き上げてきたものを根底に、ソムリエとして身につけたスキルを活かしながら、美味しいワインを広めていきたいです」
「須坂市は出身地である埼玉県入間市の風景と近いものがあって、最初から全然違和感がありませんでした。違いといえば入間市にはなかった雄大な山々が望めることです。市街地にスーパーが多いですね。身近な食料品など買い物環境はそろっているので困ることはありません。大好きな野菜も新鮮で安いです。須坂市のスーパーで売られている見切り品を見て、東京で見ていた見切り品とは比べものにならないくらい質が良くて驚きました」
●移住を希望する方へメッセージ
「移住を希望しているみなさんに声を大にして言いたいことは、もし移住を迷っているのであれば、その機を逃さないでほしいということです。移住しようと思ったら行動に移すことが大事。私は病気で倒れたことが移住を真剣に考える引き金になりました。移住を目指しながらも迷っている人は、自分の体が健康なうちに行動に移してほしいですね。移住せずに今のままでいるのか、それとも移住にチャレンジするのか、どちらが本当のリスクを伴うのかを考えて選択すればいいと思います。私は移住をせずに東京に住み続けるリスクのほうが高いと思いました。なので移住へのためらいは一切ありませんでした」
●さいごに
銀座NAGANOでの移住相談会後、岩崎さんからメールで「先程、楠社長から採用の連絡をいただきました。3月1日から勤務開始予定です」という知らせを受けました。そのメールを見た時は、思わず「わぁっ」と言ってしまい、まるで自分の夢が叶ったようで嬉しかったのを覚えています。このあともアパートが決まりましたとトントン拍子に準備を進める知らせをいただく度にとても頼もしく感じました。今回移住に至るまでのお話を伺いましたが「とにかく美味しいワインを作る場所に就職したかった」と当時の思いを話してくれました。岩崎さんは過去も未来も考えず、ひたすら目的に向かって行動し、その結果、念願だったワイナリーへの就職と移住の夢が叶いました。雄大な自然の景色を目にしながら須坂市の美味しいワインを広めていってほしいと願うばかりです。