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須坂市地域おこし協力隊 古川広野の 『ただいま!峰の原高原』 vol.8 「ヤスデの婚活パーティー」 

須坂市その他

こんにちは。長野県須坂市峰の原高原地域おこし協力隊の古川です。
この記事では、現在の峰の原高原の様子を皆さんにお伝えしていきたいと思います。

 

●ヤスデ
今回は、とあるいきものの紹介です。
ヤスデという生き物をご存知でしょうか。石をひっくり返したりすると、たまにいますよね。足がいっぱいあるアイツです。うぞうぞとうごめいている様子は苦手な方も多いかもしれませんね。しかし、攻撃的で毒も持っているムカデと違い、ヤスデは咬んだり刺したりすることはありません。触れると丸まって体を守ろうとする、穏やかな生物です。
ヤスデとムカデの違いは、足の数です。1つの体節に対し、ムカデの脚は1対、ヤスデは2対あります。脚が多い方がヤスデです。英語でも、ムカデはcentipede(百脚)ヤスデはmillipede(千脚)と言います。2倍の差なのに10倍になっているじゃないか、というつっこみはなしでお願いします。気持ちはわかりますけどね。
ただ、いざ目の前に現れたとき、とっさに脚の数なんて見ている余裕はないですよね。そんなときは歩き方でもなんとなくわかります。体の構造上、ムカデはくねくね歩き、ヤスデはまっすぐ歩きます。文字だとどうしても伝わりにくい部分もありますので、興味のある人は動画サイトなどで検索してみてくださいね。
さて、冒頭からどうしてヤスデの紹介が始まったんだろう、と思っている方もいることでしょう。その理由は、現在峰の原高原でも、たくさんヤスデが見られるからです。

 

●大量発生?
遡ること1か月。オレンジ色のヤスデが峰の原高原で見られるようになりました。俗にキシャヤスデ類のヤスデです。『キシャヤスデ』という名前は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

1976年の秋のこと。山梨県と長野県を結ぶ小海線の甲斐小泉―野辺山間でヤスデが大発生し、ひかれたヤスデからでる体液に含まれる油分で車輪はスリップ、列車が動けなくなるという事件がありました。これが「キシャヤスデ」の和名のきっかけだそうです。

現在キシャヤスデ類は3種1亜種と考えられています。峰の原高原の種類は、分布から考えるとおそらくトヤマキシャヤスデではないかと考えられます。(ここでは便宜上キシャヤスデと表記します。)さて、このキシャヤスデ、「8年に1度大発生する」と言われています。この大発生は、繁殖のための交尾相手を探すための、いわば婚活パーティというわけです。つまり、大発生しているのはすべて成虫。大発生したときに交尾し、11月頃になると地中に潜り越冬して来年の春にそのまま地中で産卵。夏ごろ孵化してまた越冬。その翌年から1年に1回ずつ脱皮し、7回脱皮を終えると成虫となります。基本的に地中で生活しているのですが、成虫になったら交尾相手を探すため地上にぞろぞろと出てくるわけです。

そしてどうやら峰の原高原では今年がその婚活パーティのようで、多くのキシャヤスデが見られます。残念ながら「キシャヤスデが見られる!」ということに喜ぶ人は非常に少なく、むしろ気味が悪く不気味に思う人が大多数です。しかし、このヤスデは土壌の落ち葉や土をたべ、分解し、土をよくする働きを持っています。森にとって非常重要な役割を担っています。大発生が起きた年にキシャヤスデが食べる落ち葉の量は、その地域での10年分程度の落ち葉と同等の量だった、という調査もあったようです。

そんな森にとって良い働きをしてくれているキシャヤスデ類は、立派な益虫なのです。しかし、見た目が気持ち悪いので嫌われ、実際は益虫なのにも関わらず『不快害虫』というなんとも哀れな呼び方をされています。かわいそうですね。
というわけで、ちょっと綺麗な姿も紹介しておきます。このキシャヤスデ、ブラックライトを当てると青白く発光します。淡く光る様子はとても幻想的です。


 

●峰の原におけるキシャヤスデ類
さて、今回紹介してきました、キシャヤスデ。8年に一度大発生する、というのが通説なのですが、前回峰の原高原で多くのキシャヤスデが見られたのは2013年なんです。8年ごとという周期から考えると、少しおかしいですよね。不思議に思い調べてみると、7令(7年目)の幼虫でも稀に地上で大発生が見られる地域もある、という文を見つけました。周期より早く出る可能性はあるようですが、今年はまだ6年目なのでまだあまり納得できません。もう少し調べていると、低温の状態が一定の期間続くことで脱皮が促されるのではないかと考えられているという一文を見つけました。もしかすると、1年に2回脱皮した年があったりするのでしょうか。またはトヤマキシャヤスデの生活史が一般的な8年周期のキシャヤスデとは異なっている可能性もあります。トヤマキシャヤスデについての生活史は、まだあまり調べられていないようです。もし詳しく知っている方がいらっしゃいましたら是非教えて下さい!
そして2013年より以前に峰の原高原でヤスデの大発生を見たことがある人は、ぜひそれが何年のことだったのか併せて教えていただけるとありがたいです。

 

●キシャヤスデ
大発生しているキシャヤスデも、10℃を下回ると活動も鈍るようになるため、少しずつ地中に帰っていきます。10月下旬にもなれば、見られるキシャヤスデの数もかなり減っていくと思われます。キシャヤスデが見たいという方は、寒くなる前に一度峰の原に来てみてくださいね。逆に見たくないという人は、寒くなるのを待つといいかも。

さて今回はヤスデ特集のような記事でした。咬まないとはいえ、直接触るのはあまりよくないようですのでむやみに触らないようにしてくださいね。
身近ないきものでも知らないことはたくさんあります。ただ嫌うだけではなく、ちょっと調べてみると意外な事実が分かったりして面白いですよ。それでは。

 

(須坂市地域おこし協力隊 古川広野)



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