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須坂市地域おこし協力隊 日下未夕の 「峰の原高原へお出かけください♪」ペンションってこんなところvol.9『ぺンションガーデンストーリー』
こんにちは、峰の原高原地域おこし協力隊の日下です。日本全国の至るところに被害をもたらしている長雨の終わりが見えてきた7月の今日この頃。分厚い雲を見慣れてきて、青空を少しでも見ることができたならば幸運のように感じます。
今回もペンションオーナーやオーナー夫人と話して感じた“このペンションってこんなところ”を紹介します。今回は『ペンションガーデンストーリー』さんです。
●山下ペンションからガーデンストーリーへ
ペンションガーデンストーリーの山下さんご夫妻は、東京都から須坂市峰の原高原に移住し、2002年に山下さんのご両親からペンションを引き継ぎました。
神戸市で生まれ育った山下さんのご両親は、「人生の後半は山に住みたい」と思って1976年に峰の原高原に移住し「山下ペンション」を開業しました。当時、山下さんは小学一年生だったそうです。その後ご両親が「最後は関西に戻りたい」という思いをもっていたため、山下さんが家族と一緒に東京から戻り、経営を始めました。
代替わりをして5年後の2007年。ペンションの約9割が自身らの苗字をつけていた時代とは異なり、だんだんとお洒落な名前のペンションが増えていたことや山下ペンションではどのようなペンションか分かりづらいこと等から、「ペンションガーデンストーリー」に改名しました。インターネットが普及してきた『検索』の時代ならではの発想です。
●この地を活かしたガーデン
ペンションガーデンストーリーのこだわりは、何といってもガーデン。ただ、庭造り好きが高じてガーデンを始めたわけではなく、峰の原高原がある国立公園では建ぺい率(土地に対する建物の割合)があり、建物が土地の20%と決められていることから、「お客さんが来る場所だから、広いお庭をきれいにしておきたい」と思ったことから始めたそうです。
「両親が園芸好きだったため、ある程度はきれいだったので、“もっときれいにしよう!”と思って始めたらハマりました。きれいになってくると、花好き・庭好きの人にも見てもらいたいと思うようになりました。須坂市でオープンガーデン事業が始まったこともあり、お庭を見るためにお客さんが来るようになりました。
昔は、小布施や善光寺、菅平高原で合宿をしている子どもの応援など峰の原高原に来る目的は様々でしたが、現在は、お庭を目当てに来るお客さんの比率が増えています。お寺巡りや温泉巡りと同じように“お庭巡り”という花だけを見に来る観光形態のお客さんです」
●限定三名のプライベートツアー!
「昔のお客さんは、特急+バス+お迎えだったけれど、今はほとんどのお客さんがマイカー。庭巡りの方は特にマイカーで色々なところに行くようです。ただ、ガーデン巡りはご夫婦そろって好きなわけではなく、ご婦人だけが好き、という方もいて車で来ることが難しい方もいらっしゃいます。そういう方のために、プライベートツアーという形で、長野駅まで迎えに行ってガーデンを巡り、上田方面におりてガーデンを巡り…、ということもやっています。長野県には、パブリックガーデンが複数あるのも魅力です」
●マニアックに、特化したペンション経営を
「ペンション業とは?」
―「今の時代、マニアックにやった方がいいですね。昔は東京、千葉、埼玉、神奈川の一都三県のお客さまが約9割を占めていて、その人たちはひとまず信州に来て、善光寺でお参りをして温泉に行って宿泊しよう、という漠然とした旅でした。また、ペンションブーム、テニスブーム、スキーブーム、長野県の場合はこの後にオリンピックがあったため漠然とペンションに泊まってみたい、スキーをしてみたいというお客さんが来てくれました。それこそ、道に縦列駐車していた時代、予約が取り切れず、満室で黒電話に布団をかけて聞こえないようにしていた時代もありましたよ。うちも三人のお手伝いの方に来てもらっていた時がありました。しかし、その後バブルがはじけてブームが去ってからは漠然とやっているとお客さんが来ない状況になりました。
今のお客さんはアニメの聖地巡りのように何か一つのものを目当てに動くようになっています。インターネットの普及とともに、それぞれの好みにあったものを選択するようになって、全員が一緒に動くより自分が好きなものを突き詰める、というように時代が変化しています。漠然と“ペンションやっています”と言うだけでお客さんが来る時代とは違います。
時代とともにペンションのスタイルも変化しています。漠然とやっているだけではお客さんが来ないので、うちのようにガーデンに特化したペンション、陸上合宿に特化したペンション、きのこに特化したペンションなど、峰の原高原でも何かしらに特化してやっているペンションがあります」
●ペンション一軒一軒が輝ける場に
「峰の原高原の魅力は?」
―「総合力がここの魅力。こんなにペンションが集まっているペンション村は多くない。ペンションはそれぞれ違うから、40軒あれば40個の魅力があって、その中のどれかに当てはまる人がいます。一軒一軒の魅力、素朴な魅力を見つけて発信することが大事です。ペンションでも、道端の山野草でも、空でも、涼しさでも何でもいいんです。つぶやきや投稿を見て“行ってみようかな”となる時代。興味を持つ人がピンポイントで来てくれます」
●器は同じでも中身は変えた方が良い
「峰の原高原のこれからは?」
―「ペンションは世代交代が難しいと思います。建ぺい率もあるので、こぢんまりと造ってあり、プライベートルームも二部屋ほどと少なく、物理的に二世代住むことが難しいです。また、経済的にも二世代が住み、暮らすだけの収入を得るのも難しい。ペンションは子ども世代が帰ってきたら、親世代は出なければいけません。さらに建物も築40年が過ぎ、メンテナンスをしていてもあと何十年持つか分かりません。そこで、ペンションを建て替えてまでやろうとは、ビジネスとして、現実的には厳しいことです。車を運転できなくなると峰の原高原を降りざるを得ないし、徐々にペンションの軒数が減っていくことも、人口が減っていくことも、お客さんが減っていくことも自然な流れです。もちろん、若い人が入ってくるのもいいことではあるけれど、劇的にこの流れを食い止めることは難しいです。
また、通年での営業が難しい場所でもあります。オンとオフがあり、観光案内所やそれに併設されたカフェやレストランは営業し辛い。こういう場所だから、普段はガラガラ、繁忙期は混雑、となってしまいます。
ペンションは、オーナー世代とお客さん世代がマッチングするんです。私の親世代の常連さんは30歳も年下の私との会話ではやはり違いが出ます。どれほど同じスタイルで同じ質のお料理を提供しても、オーナーの存在感が大きい宿泊スタイル。親世代の常連さんは今では年間で10組ほど。雰囲気を引き継ぐより、全く新しいものをやる方が良いので、器は同じでも中身は変えた方がペンションには良いです。ペンションを経営したい、純粋にここに惚れて山暮らしが好きで、というやる気を持った人がいれば、代替わりではなく、新しい人にペンションを引き継ぐ方がいいのではと思います。そうすれば峰の原高原は持続可能かもしれないですね」
●一生懸命やっておけば何かで繋がってくる
「若者へメッセージをおねがいします」
―「やるとなれば何でも大変。東京から一歩出れば、農家、商店、個人経営のレストランや宿がたくさんあり、人口や観光客が減る中で、みんなどこかで折り合いをつけてやっています。今勉強していることが将来に直接繋がるかは分からないけれど、一生懸命やっておけば何かで繋がってくると思うので、応援しています」
●おわりに
峰の原高原の最盛期を過ごし、二代目としてペンションを経営する中で、“オーナーが変わればペンションが変わる、オーナーが変わればお客さんも変わる”ということを実感されている山下さん。だからこそ、ペンションをやってみたい!という人がいればぜひ来てみてほしいとおっしゃっていました。「同じペンションはひとつもないのだから、ペンション一軒一軒が輝けるような村、個性あるペンションが集う村に。細分化されたツーリストが自分に合ったペンションや観光地を見つけることができる持続型の経営をしていきたいと思います」
オープンガーデン期間真っただ中のガーデンストーリーさん。ぜひ、訪れてみてはいかがでしょうか。
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ペンションガーデンストーリーホームページ
http://www.janis.or.jp/users/v.yama/
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(須坂市地域おこし協力隊 日下未夕)
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