移住関連情報
2021年8月から須坂市で画期的な取り組みがスタートしています!「地域おこし協力隊信州須坂モデル」新しい隊員×元隊員の二刀流で地域課題を解決!!
信州自治(2021年9月15日発行)に信州須坂モデルの取り組みが掲載されました
※長野県庁から毎月発行されている県内市町村の取り組みなどを紹介する冊子です
* もくじ *
1 協力隊が抱える共通した悩み
2 起業した元隊員が設立した協議会に新しい協力隊を配置
3 1年ごとにスケジュールを立て任期3年で起業を目指す
4 二刀流で挑む地域の活性に向けた5つの課題
5 私たちが協力隊の活動をバックアップします!
6 須坂モデルが「募集しても集まらない」を解決
7 2021年8月から2名の隊員が活動を開始!
8 さいごに~打率0.00からの挑戦~
須坂市地域おこし協議会
※左から早川会長、小田隊員、村田隊員、古川副会長
協力隊が抱える共通した悩み
「相談相手がいない」「人脈が築けない」「自分の活動ができるまで時間がかかる」
投打で大活躍し特大のホームランを量産する大リーグのエンゼルス大谷翔平選手が、大いなる挑戦のため海を渡ってから今年で4年目になります。須坂市では、2014年度から地域おこし協力隊を導入し今年で8年目。現役隊員を含めこれまで20名を超える個性豊かな協力隊が活動をしてきました。隊員の年齢は20代から60代と幅広く、前職は学生、会社員、公務員、中国からの留学生など経験やスキルも様々な隊員が、移住支援、空き家対策、観光振興、農業振興、スポーツ振興など多岐にわたる分野で活躍をしてきました。
反面、多彩な隊員が多様な活動を市内全域で展開するため、協力隊同士が顔を合わせたり連携したりする機会が少なく、隊員からは「周りに相談する相手がいない」「知らない土地で人脈が築けない」「自分の活動ができるまで時間がかかる」という相談が寄せられていました。
これらの課題を解決するには、「相談できる仲間がいて」「素早く人脈を築き」「起業まで活動が繋がり」「定住できる」ことが必要になります。それもたまたまではなく、仕組として定着させるため、須坂市では今年度から「地域おこし協力隊信州須坂モデル」をスタートします。
起業した元隊員が設立した協議会に新しい協力隊を配置
WinWinの関係で地域おこし活動を行います
須坂市では、本年度起業した2名の元隊員に呼びかけ「須坂市地域おこし協議会」を立ち上げました。協議会へは、今年8月から新しい隊員2名を配置。新しい2名の隊員は、起業した2名の元隊員と一緒に、それぞれが起業した農林業と観光業における地域おこし活動を行います。
新しい隊員は元隊員と活動を共にすることで、生活面における相談事をいつでも伝えることができ、また、元隊員がこれまで築いてきた人脈を紹介してもらうことでスピーディーな地域への溶け込みも可能になります。さらに元隊員の起業活動からOJTでそのスキルを学ぶことができます。
起業した元隊員にとっても、協力隊というマンパワーを活用し自身の起業活動を軌道に乗せるとともに、人材を活かすという経験を学ぶことができます。
1年ごとにスケジュールを立て任期3年で起業を目指す
地域おこし協力隊の循環型モデルで点の活動から面の活動へ広げる
地域おこし協力隊の活動は、開始から起業までの間、1年毎にスケジュールを立てて進めていきます。1年目は、起業した元隊員の経験やスキル、人脈を引き継ぎながら、農林業と観光業における5つの事業を行っていきます。2年目は、5つの事業の中から、隊員が自分で起業へと繋げたい活動を深掘りしながら、さらにスキルアップを図ります。3年目は、開業に必要な経営などのスキルを習得し任期終了後の起業を目指します。
任期終了後、めでたく起業を果たした隊員は、「須坂市地域おこし協議会」に所属し、新しい協力隊のサポートを行い、新しい隊員と自ら起業した事業を一緒に行っていきます。本取り組みの「地域おこし協力隊信州須坂モデル」が循環することで、起業し協議会に所属する元隊員が増え、それに伴い新たに採用する隊員が増えていきます。当初、点で始まった協議会での活動が、面として須坂市全体へと協力隊活動を広げていくことが今後期待されます。
二刀流で挑む地域の活性に向けた5つの課題
キーワードは「未利用地の解消」
今年度起業し、新たに協議会を組織する会長の早川元隊員と副会長の古川元隊員は、それぞれ農林業と観光業の分野で事業展開を進めています。
早川元隊員は、これまでに特殊伐採の技術を身に着け森林資源の利活用に取り組んだり遊休農地の利活用を進めています。古川元隊員は、空きペンションを改修し交流拠点を整備したりペンション用地を活用したキャンプ場の運営を進めています。
今年度、協議会では「未利用地の解消」を地域活性化のキーワードに、早川、古川両隊員が起業した事業のうち以下の5つの活動を新たに採用する隊員と共に行っていきます。
《協議会で取り組む5つの活動》
1 森林資源を活用した特殊伐採と薪ステーションの運営
2 遊休農地を活用したソルガム栽培と特産品づくり
3 未利用地を活用したミニキャンプ場の整備、運営
4 空きペンションを活用した交流拠点づくり
5 自然体験イベントやワークショップ等の拠点づくり
(1年目の年間スケジュール)
協議会で取り組む5つの事業①
森林資源を活用した特殊伐採と薪ステーション
(目的)
須坂市内において安全かつ少人数で作業が可能な特殊伐採の技術者を増やし、専門的な技術に基づき、豊かな里山を後世まで伝えていけるような担い手を増やしていきます。また、須坂市内で発生する木材資源を薪として加工し、薪ストーブユーザーやキャンプ場向けに販売することで再利用と収益化を図ります
(現状と課題)
森林や果樹畑が多い須坂市ではりんごやブドウの剪定材は毎年一定量発生しており、農家も処理に困っています。また須坂市には豊かな里山が多く、手入れをしている場所でも多くの間伐材が発生しています。伐採作業から回収、加工までを担い、大切な地域資源を利活用できる人や場所を増やしていく必要があります。
(取組内容)
①地域内で発生する不要木の回収、薪への加工、販売を行います
②特殊伐採技術を活用した街路樹や施設敷地内の木々の剪定業務を行います
(年間スケジュール)
〈特殊伐採の技術を学ぶ&薪ステーションの運営〉
協議会で取り組む5つの事業②
遊休農地を活用したソルガム栽培と特産品
(目 的)
須坂市内で山間地域を中心に増加している遊休農地や耕作放棄地を活用し省力栽培が可能なソルガムの栽培普及を行います。また生産したソルガムを活用した特産品を作ることで六次産業化を目指します。
(現状と課題)
長野市と信州大学の共同研究で始まった信州産ソルガム事業について食用活用が広がってきており、生産者数、生産面積も年々増えてきています。その中でも須坂市は長野市に次ぐ一大産地となっており、栽培ノウハウが蓄積されてきています。今後須坂市での栽培普及の拡大と共に、特産品として商品作りに取り組む必要があります。
(取組内容)
①須坂市内における信州産ソルガムの栽培ノウハウの定着、集荷体制の構築
②須坂市内の製菓業者や飲食店の協力を得て、特産品の開発に着手
③収穫後、残った葉茎について緑肥や動物園の餌としての活用方法を研究、検証
(年間スケジュール)
〈ソルガムの栽培&特産品づくり〉
協議会で取り組む5つの事業③
未利用地を活用したミニキャンプ場
(目 的)
近年、アウトドアがブームで長野県でもキャンプ場の需要が増加しています。市内の未利用地に、開発コストや維持コストが小さく環境にも優しいミニキャンプ場を増やしていくことで、未利用地という資源の活用と、須坂市が「アウトドア都市」になることを目指します。
(現状と課題)
須坂市には現在「峰の原高原キャンプ場」「五味池破風高原キャンプ場」という大型のキャンプ場が2つと、2021年5月にオープンしたミニキャンプ場「【須坂温泉】山の神キャンプ場」などがあります。山の神キャンプ場が成功モデルになるよう、運営ノウハウを確立しなければなりません。
(取組内容)
①【須坂温泉】山の神キャンプ場においてアウトドアワークショップの開催運営やキャンプ場運営の定着を図ります
②関係各所と連携し、アウトドアイベントの開催やアウトドア用商品の開発を行い、須坂市におけるアウトドア文化を創出、発信します
(年間スケジュール)
〈未利用地を活用したミニキャンプ場の整備・運営〉
協議会で取り組む5つの事業④
空きペンションを活用した交流拠点
(目 的)
かつては100件近くあった峰の原高原ペンション村も、現在ではオーナーの高齢化、ペンションブームの衰退などによりその数は半減しています。それに伴い空き家となってしまっている建物も増え、観光地の景観としては好ましくない状況にあります。空きペンションを利活用し新たな活用を地域へ提案することで、今後空き家をできるだけ増やさないように観光地としての景観を維持していきます。
(現状と課題)
冬季の凍結などにより使えなくなってしまっていた空きペンションを整備し、現在は建物として使える状態になっています。長野大学の学生と共に交流人口を増やすことを目標としていますが、場所の問題もありなかなか利用者がいないことが課題となっています。
(取組内容)
①レンタルスペースとして利用するため館内を管理、整備、運営
②館内や庭部分、傷んだ部分等の整備
③情報発信事業
④長野大学環境ツーリズム学部の学生と協力し事業を実施
(年間スケジュール)
〈空きペンションを活用した交流拠点づくり〉
協議会で取り組む5つの事業⑤
自然体験イベントやワークショップ
(目 的)
地域の環境に対する理解を地元の人をはじめ、より多くの人に広めることを狙い、空きペンションを利用して子ども向けの自然体験活動(ネイチャークラフト)などを行える拠点機能を持たせ利用します。
(現状と課題)
峰の原高原は自然体験学習を通して須坂市の小学校をはじめ様々な人が訪れていますが、環境教育や自然体験活動の出来る拠点となる場所がありません。地元では環境保全や景観維持のための活動を行ってはいますが、活動を周知する場所が少ないことが課題となっています。
(取組内容)
①地域の環境・景観整備作業への参加
②ネイチャークラフト(材料集め、制作物検討、制作・販売)の制作
③自然体験イベントの運営、企画、手伝い
④情報発信事業
(年間スケジュール)
〈自然体験ワークショップ&星空観察会〉
私たちが協力隊の活動をバックアップします!
須坂市地域おこし協議会
(会長)早川 航紀
2018年から3年間須坂市地域おこし協力隊として活動し、長野市地域おこし協力隊の仲間と信州産食材の販売会社「AKEBONO株式会社」、農林業での地域活性化を目的とした「こだま山商」を起業しました。
任期中、1年目は人脈づくりであっという間に終わってしまいました。3年間という限られた期間の中で、課題と向き合い行動を起こすまでの時間としては非常に長く、地域おこし協力隊員にとってすぐに相談ができ、関係者とのパイプ役となる存在の必要性を強く感じました。現役協力隊員と地域との橋渡しとなるべく、「須坂市地域おこし協議会」を発足しました。
そしてOB協力隊員となる私自身も引き続き須坂市において地域課題に向き合い、現役協力隊と切磋琢磨しながら、事業を通じて地域活性化を目的に活動を続けていきます。同じ志をもった仲間として協力体制を築いていきます。
須坂市地域おこし協議会
(副会長)古川 広野
2018年に地元須坂市にUターンし、地域おこし協力隊として活動していました。地元の地域を永く残していくために、任期終了後空きペンションの利活用を目的として事業を行っています。
近年再び地方生活の需要が高まっている一方で、まだまだ多種多様な課題を抱えています。出来ることは少ないかもしれませんが、今後の地方における生活を考え、共に活動していくことが出来れば嬉しく思います。
須坂モデルが「募集しても集まらない」を解決
募集に10数人から問い合わせ、5人が現地説明会に参加
今回、「須坂市地域おこし協力隊信州須坂モデル隊員募集」は、須坂市移住応援サイト「スザカでくらす」、長野県移住サイト「楽園信州」、JOIN「ニッポン移住・交流ナビ」で募集しました。募集は一般的な募集要項に加え、活動内容と年間及び3年間のスケジュールを10ページの事業計画書にまとめ明示しました。
これまで須坂市で募集する協力隊への問い合わせは数件程でしたが、今回は10人以上から問い合わせがあり、20~30歳代の5名が実際に現地説明会に参加し、このうち2名を採用しました。「元隊員と活動ができるので安心」「起業のスキルが身に着けられる」と、地方へ移住し起業したいという若い世代から予想以上に高い関心が寄せられました。
今回の取組が、「活動中のサポート」や「任期終了後の支援」に加え「募集しても集まらない」の3つの課題を一挙に解決する可能性を秘めています。
※募集要項に添付した事業計画書(PDFファイル)参照
2021年8月から2名の隊員が活動を開始!
私たちが須坂市地域おこし協力隊に応募した理由
須坂市地域おこし協力隊 村田 健児(兵庫県から移住)
私が学生の頃に描いていた「仕事を通じて社会貢献する」を実現するため、須坂市地域おこし協力隊に興味を持ちました。須坂市に応募した理由は3つあります。①募集要項に「地域おこし協力隊」の活動の目的は起業することと明記してあり、活動を通して起業に関して技術を身に着けることができることです。協力隊経験者や移住者が多く、相談しやすい環境が整備されていることも理由です。②須坂市は移住に関してユーチューブ動画などでリアルな情報が発信されており、須坂市と隊員と地域との強いつながりを感じました。③現地見学会に参加し、活動場所を見学しましたが、他にも魅力的な場所や季節の変化を移住後に楽しみたいと思いました。
最後に、会社勤めと全く異なる働き方に不安もありますが、100回挑戦して1回でも成功し、本当の意味で「地域おこし」ができるように悔いがない活動を目指します。
須坂市地域おこし協力隊 小田 達彦(神奈川県から移住)
私が「須坂市地域おこし協力隊」を希望した理由は、活動内容が理想の移住の流れとマッチしていたからです。地方に移住するのであれば、いずれは地域の魅力をもとにした事業を起こしたいという希望を持っていました。
地方での起業に必須である人との繋がりや地域への理解を得るために、地域おこし協力隊の制度を利用して地域に溶け込むことから始めることが最良の方法だと考えています。そのような中、協力隊OBの皆さんと一緒に起業を前提として様々な経験を積むことができる今回の活動は、まさに理想としていた内容であると感じています。
地域おこし協力隊の任期3年間が終了した後も継続して事業に関わることで、地域活性化の軸となる役割を担っていきたいと思います。
さいごに~打率0.00からの挑戦~
須坂市政策推進課信州須坂移住支援チーム 加藤 広明
2014年に私が新設の信州須坂移住支援チームに異動になり地域おこし協力隊を担当するようになり今年で8年目。当時は協力隊の運用に関しモデルケースがほとんどなく手探り状態でのスタートになりました。初年度から8名の協力隊を採用することになり、受入態勢が整わなかったり、受入団体と協力隊との間にミスマッチが生じました。3年の任期を全うできずに退任する協力隊もおり、初年度に採用した隊員8名の市内定住率は0%という結果になりました。
初年度の反省から、地域おこし協力隊と受入団体とのミスマッチを防ぐため、「協力隊を必要としている団体・地域へ配置する」ことを原則に、次のステップを心がけ取り組みをすすめています。先ずは、東京やオンラインで募集説明会を開催し受け入れ側が協力隊に希望する活動を全て説明し、本人の希望や経験と擦り合わせをします。
次に、必ず現地説明会へ参加してもらい受入団体や地域とのマッチングを実施。その後、応募・面接を行い採用しています。採用後の住居はできる限り活動地域内に確保し、消防団など地元の活動にも積極的に参加してもらっています。その結果、隊員の定住率は60%まで上昇してきましたが、隊員の「活動中のサポート」や「任期終了後の支援」に関しては課題が残っており、地域おこし協力隊信州須坂モデルをスタートさせました。
前述のとおり、信州須坂モデルが「活動中のサポート」や「任期終了後の支援」に加え「募集しても集まらない」の3つの課題を一挙に解決する可能性を秘めています。「新しい隊員×元隊員の二刀流」で地域おこし協力隊の課題解決三冠王とMVPを目指し信州須坂モデルを推進していきたいと考えています。
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